私の家のベランダには座椅子が無造作に置いてある。
数年前、宿舎にすんでいた時に、同じく宿舎に住んでいた友人が
引っ越すというので、いらなくなった座椅子を譲り受けることになった。
濃紺のフリース生地で覆ってある背もたれがついたもので
特別良いというわけではないが、楽な体勢をとるのに重宝していた。
布団と同じように陽にあてるつもりで外に出しておいたのがダメだった。
その日のうちに部屋の中にしまえばよかったのに、
そのことをすっかり忘れていてたのである。
数日経った後、雨に降られてずぶぬれになった
もはやそのものの持つ魅力をなくした物体がそこに
横たわっていたのであった。
しかし、私の他にそれを気に入っているやつがいる。
どこからやってきたのか白と黒の斑模様の猫。
気がつけば座椅子は猫のモノになっていた。